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最高裁判所第三小法廷 昭和45年(オ)115号 判決 1972年2月15日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人渡辺良夫、同四位直毅、同南元昭雄の上告理由第一、二点について。

所論は、本件土地についてなされた二回目の買収処分は、本件土地が既墾地であることが明らかであるのに未墾地であるとしてなされたものであつて、無効であるから、その売渡処分によつては被上告人は本件土地の所有権を取得しなかつた旨、また、右買収処分にあたつては、当時本件土地上に生立していた葡萄の木は買収の対象から除外されたものである旨を主張し、これを前提として、上告人らに対して不法行為の成立を認めた原判決に理由不備、判断遺脱等の違法がある、というのである。しかし、所論のような事由により被上告人が本件土地ないしその地上に生立する葡萄の木の所有権を取得することがなかつたかどうかは、事実審において上告人らが抗弁として主張することによりはじめて審理の対象となりうべきことがらであるが、記録によるも、上告人らが原審において右の事実を主張した形跡は認められない。また、所論第二点の違憲の主張も、原審において主張しない事実関係を前提にするものにすぎず、いずれも上告適法の理由にあたるものとはいえない。なお、本訴は、被上告人が上告人らの故意または過失により本件葡萄の木の所有権を侵害されたことを理由として、上告人らに対しその損害の賠償を求める訴訟であるから、被上告人は、登記その他の対抗要件を備えることなくして上告人らに対しその所有権を主張しうるのであり、原判決が民法一七七条の解釈、適用を誤つたものとする所論の理由がないことは明らかである。論旨は、すべて採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝)

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